トランペット初心者向け記事の第2回です。
前回の記事で、トランペットの仕組みや、初心者がトランペットを買うときに気を付けることに関してお伝えしました。
「これからトランペットを始めてみよう!」という方は前回の記事を読んでみてください。
トランペットに関する基礎知識はわかっていただけたと思うので、いよいよトランペットを吹く準備の段階に入りましょう。
トランペットを吹くにあたり、ケースから出していきなり楽器をかまえて吹き始めることはおすすめできません。
自分と楽器の状態をしっかりと整えてから練習に入るようにしましょう。
また、トランペットは精密にできています。定期的なメンテナンスとお手入れをすることにより、より良いコンディションを保つことができます。
そこで今日の記事は
- 練習を始める前にやってほしいこと
- 練習が終わった時のお手入れ方法
- 定期的にやってほしいお手入れ
これらについて解説します。
トランペット歴20年以上の私が実際にやっている方法と、しないように気を付けていることをお伝えします。
初めての方にもわかりやすく解説しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
トランペットの練習を始める前に
先にも言った通り、トランペットは精密にできています。
機械ではありませんが、楽器が痛んだり汚れていたりすると、本来の音が出ないばかりでなく、故障の原因にもなりますので、楽器を吹く前にしてほしいメンテナンスを解説します。
合わせて、練習を始める前の基本的なセッティングについても解説します。
トランペットを吹く前に必ずやろう!ピストン注油。
ケースからトランペットを出したら、まずはピストンバルブ(以下ピストン)にオイルを差しましょう。楽器メーカー各社から「バルブオイル」というものが発売されています。
一般的なトランペットは、3本あるピストンを上下させることにより管の長さを変え、音を変えます。そのピストンは、手で触れることができる外側を「バルブケース」と呼び、内側の部分を「バルブ」と呼びます。
これらは金属でできているため、擦れ合った摩擦で痛んでしまう恐れがあります。オイルが切れた状態だと、スムーズに動かないばかりか、ピストンを押しても戻ってこなくなってしまうこともあります。
ですので、ピストンへの注油メンテナンスはトランペットにとって非常に重要なため、内容と画像多めで詳しく解説します。
バルブオイルの差し方と注意点について
まずは、バルブケース上部のネジ部分を緩めましょう。
その後、図のように「半分程度」バルブを引き出します。
トランペットをまっすぐ持つと、重力でバルブが戻ってしまうので、少し傾けるとやりやすいです。
バルブは必ず「バルブケースに対してまっすぐに」引き抜いてください。斜めに引っ張ると、バルブに傷がつきます。ここは慣れるまで慎重にやりましょう。
バルブオイルを差すのは、スプリングよりも下の部分です。この時のポイントは
「一番上から一周程度オイルを差す程度にすること」です。
バルブをすべて抜き出し、全面にオイルを差す人がいますが、あまり意味がありませんし、オイルがもったいないので「上から一周だけ」差しましょう。
オイルを差すときのポイントは次の通り。
- バルブは「まっすぐ」引き抜く
- バルブはすべて出さずに上だけ出ればOK
- 上からチョンチョン、一周でOK
- 丸い穴の部分にはオイルは入らないように
オイルを差し終わったバルブは、抜いた時と同じようにまっすぐ戻します。
戻したら、すぐにネジを締めず、ピストンの一番上を持って左右に少し回しましょう。そうすることで、元あった場所に「カチッ」とハマる場所があるはずです。しっかり元の場所に戻ってからネジを締めましょう。
戻す向きがわからなくなった場合、バルブに「1」「2」「3」と書かれていれば、そちら側が正面手前に来るのが一般的です。(下記画像参照)
【参考】バルブオイルの種類と注油回数について
バルブオイルには様々な種類があります。
大きな違いは「粘度」。つまりサラサラ度の違いです。
トランペットのピストンはストロークが短く、「押す」「戻る」の動きが速いためサラサラ系のオイルが好まれる傾向にあります。また、買って間もない楽器にもサラサラのオイルが向いていると言われています。
粘度の低い(サラサラ)オイルを使用する場合は、オイルの効果時間が短いと言われていますので、こまめに差すようにしましょう。
毎回の注油は必要ないけど確認してほしい部分
ピストンへバルブオイルを差し終えたら、次は各種「抜差し管」のチェックをしましょう。
主管抜差し管(チューニングスライド)
マウスピースを差す「マウスパイプ」から伸びた、「ウォーターキィ(つば抜き)」がついている部分を「主管抜差し管」と呼びます。
ここは、トランペットの音を「チューニング(調律)」する際に使います。
トランペットは金属なので、温度の変化で音の高低が変わることがあります。また、演奏する人の状態によっても音程が変化する場合があるため、チューニングスライドを調整することによって音程を調整します。
演奏中に何度も動かす部分ではありませんが、スムーズに動かないとチューニングに手間取るため、しっかりと動くかを確認しましょう。
よくやっている人を見かけますが、ベルに指をかけてチューニングスライドを動かすのはあまりおすすめしません。毎回ベルを抑えてスライドを動かしていると、ベルがゆがみます。スライドが固いと特に。(画像参照)
第1、第2、第3抜差し管
第1ピストンについているスライドが「第1抜差し管」、第2、第3も同様です。
ここでは便宜上「第1~第3スライド」と呼びます。
第2スライドについては、あまり触れる機会がないので、固着して外れなくならないように、ちゃんと抜けるかたまに確認しましょう。
第1、第3スライドは、演奏中によく使います。
トランペットには「運指」と呼ばれるものがあり、ピストンの押す組み合わせによって音を変えるのは前回の記事でお伝えした通りです。
ただ、運指が合っているからといって、必ずしも「完璧な音程」の音が出るとは限らないのがトランペットの難しい所です。
そこで、演奏中、出す音に合わせてスライドを操作することにより。正確な音程に合わせることが可能になります。
曲のジャンルによってはあまり活用することはなかったりするのですが、オーケストラや吹奏楽の「コンクール」と呼ばれる大会では、「和音(ハーモニー)」が非常に重要視されるため
「この音はこう!」「ここの音はこの音程!」と突き詰めていったりします。
その際、スライドをフル活用し、微妙な音程調整をします。
スライドを動かす際には、注意点があります。
「動かすスライドに対応したピストンを押しながら動かす。」
これを徹底してください。例えば、第1スライドを、何もせずそのまま引き抜くと
「ポンッ!」と可愛らしい音が鳴ります。しかしこれはNGです。楽器に悪影響が出るので、必ず第1スライドなら「第1ピストンを押しながら」動かしてください。
参考画像を載せておきます。
第1、第3スライドの操作感は、好みによって分かれます。
私の場合はクラシックを吹く機会が多いため、スライドを多用します。自分の中でスライドありきの音程調整になっている部分もあります。
ですので、スライドは「楽器を傾けると動いちゃう」ほどにスルッスルに調整しています。
逆に、あまり動いてほしくない人は固めに、少し抵抗感があったほうがいい人は柔らかめに調整しています。
第1スライドと第3スライドには、抜け落ち防止のためのストッパーがついていることが多いですが、エントリーモデルの中にはストッパーがないものもあるため、あまりスムーズにしすぎると抜け落ちるので注意しましょう。
スライドに塗るオイルについては、軟膏のようなもの、リップスティック状のものなど様々あります。好みに応じて使い分けるといいと思います。スライドのお手入れは、毎日やる必要はありませんが、自分の好みの操作感をキープできるようにお手入れしましょう。
トランペットをケースにしまう前に
これはダメな例です。楽器をケースにしまう前にの手入れを怠ると、楽器の寿命を縮めることにも繋がりますので、しっかりとお手入れしましょう。
楽器をしまう前に確認すること3つ
「楽器の中の水分をしっかり抜く」
トランペットを吹いた後は、中に水分が溜まっています。毎日吹いている人でも、しっかり水分を抜かないと、楽器の中の水分が「ヘドロ」と化します。しっかりと水分を抜かずに楽器を放置すると、高確率で楽器の中はヘドロだらけとなります。
水分を完全に抜くことは難しいですが、楽器をしまう前には
- ウォーターキィからしっかりと水分を飛ばす
- 第1~第3スライドを外し、中の水分を切る
- ウォーターキィに付着した水分をふき取る
これらを行い、できるだけ水分を残さないようにしましょう。
特にウォーターキィはコルクでできているため、水分が残っていると腐食しやすいです。布をかませるなどして、水分をふき取りましょう。
「スライド類をすべて戻す」
チューニングスライドを抜いたまま楽器をしまうことはやめましょう。
スムーズに動くことが大事なスライド類にとって、乾燥は大敵です。スライドはしっかりと根元まで戻し、乾燥を防ぎましょう。
「指紋、汚れをふき取る」
トランペットのメッキは、手についた汗や脂で劣化します。メッキがはがれると、真ちゅう部分が露出し、そのまま使い続けると穴が開いてしまいます。
自分が触れた部分や、水分が付いた部分を拭いてからケースにしまいましょう。
トランペットの大掃除。定期的なお手入れいろいろ
トランペットは、毎日お手入れしていても、どうしても楽器の中に汚れが溜まります。
毎日きちんと拭いてからしまっても、ピカピカのままではありません。
そんな時は、少し大掛かりな「トランペットの大掃除」をしましょう。
トランペットをピカピカに。クロスとポリッシュ。
毎日クリーニングクロスで拭いているのに、なんだか汚れが目立ってきた。
そんな時は、「ポリッシュ」を使ってみましょう。
ポリッシュを少量クロスに含ませて磨くと、研磨剤の効果により、黒ずみやくすみを取り除くことができます。
研磨剤入りなので、大量に使用したり、毎日使用することは控えたほうがいいと思います。頑固な汚れや、大掃除の時に使うくらいが丁度よいでしょう。
トランペットの中までスッキリ。フレキシブルブラシ
トランペットを吹く際、中にたまった水分はいわば人間の「ツバ」にあたります。人間から出た水分は栄養価が高く、腐敗しやすいです。ですので、どうしてもトランペットの中には「ヘドロ状の汚れ」が堆積していきます。さらにその汚れを放置すると、だんだんと固まり、頑固な汚れとなって「音が詰まった感じがする」原因になったりします。
そうならないためにも、月に1回はトランペットの管を掃除しましょう。
ワイヤーを被覆した先にブラシが付いた「フレキシブルブラシ」という道具を使えば、細い管の中までブラッシングして汚れを落とすことができます。
汚れが固まってしまう前に、定期的に掃除しましょう。
マウスピースの中を掃除する「マウスピースブラシ」という商品もあります。マウスピースの中身も同様に掃除しましょう。
トランペット本気の大掃除、「丸洗い」。
トランペットの外せるパーツをすべて分解し、「ブラスソープ」という洗剤のようなものを使って丸洗いすることもできます。
内側、外側すべての汚れを落とせるため、大掛かりではありますが、まとめてきれいにすることができます。
丸洗いは近日私も実施予定ですので、その様子は別の記事でお伝えしようと思います。
楽器の「中身」を洗うと、「吹奏感」が大きく変わることがあります。それによって、音程が取りづらくなったり、音量が変わってしまうようなこともあり得ます。重要な本番の前やコンクール前の掃除は緊急時以外は避けたほうが無難です。本番が終わってから楽器をきれいにしてあげることをおススメします。
トランペットのお手入れ、準備のまとめ
それでは本記事をまとめます。
- ケースから出していきなり吹くのはNG
- まず最初に「バルブオイル」を差そう
- 各種スライドの動きを確認しよう
- 楽器をしまう前には水分を出し切る
- ウォーターキィのコルクもしっかり拭く
- 指紋や水分をしっかりとふき取る
- 定期的に中のヘドロを掃除しよう
- 色がくすんできたらポリッシュを使おう
- 丸洗いもできるけど、本番前は控えよう