トランペット初級者向け記事の第3回です。
トランペットを吹いていて、速い旋律をパラパラと吹く部活の先輩に憧れたことはありませんか?
はい、それ私のことです。
憧れました。でもそれ以上に、憧れられました。むしろ「とても」憧れられました。
今日の記事は、トランペットにおいて
「どうしたら速い曲でもスラスラ指を動かせるの?」という疑問についてお答えしたいと思います。
トランペットでの指の動きを「運指(うんし)」と呼びますが、今日はその運指について詳しくお伝えします。
トランペット歴20年以上、アマチュアの星こと私AJIが、主に高校時代に意識して体得した運指のコツをお伝えします。この記事を読んでいただき、皆さんのトランペットライフが少しでも楽しくなれば幸いです。
先を読み進める前に結論から書きますと、速い指使いに必要なのは
「コツ」と「練習法」と「努力」です。
では詳しくお伝えしていきますので、最後までご覧ください。
前回までの記事はコチラ
トランペットで指が速く動かせない・・・
私自身、現役ゴリゴリの学生時代はもとより、社会人になってからも運指について「速い」と言われることが多くあります。ですが、そんな私は、正直他の人よりは身体的に「向いていなかった」と感じます。
理由は後述しますが、向いていなかったからこそ、その分工夫し、練習しました。
今日はそのメソッドを全部お伝えします。
今日の記事では、「構え方」、「指の動かし方」についての意識を変えましょう。
意識が変わったならば、あとはそれを磨くのみです。
トランペットで指使いが速いことを「指が回る」という表現をしますが
「指が回るのは生まれつきではありません、コツと努力です」
トランペットで速く指が動かせない原因
トランペットにおいて、指が動かない原因はいくつかあります。簡単にいくつかの項目に分けてみたいと思います。
- 「頭」がついていかない
- 「目」がついていかない
- 「指」がついていかない
①と②の「頭がついていかない」「目がついていかない」に関しては、運指そのものに対する習熟不足、楽譜そのものに対する習熟不足が主な原因です。
トランペットの指使いに頭(考え)がついていかない場合
①の「頭がついていかない」については、「運指」が頭の中にしっかりと入っていないといけません。
初心者の方はまず、運指を徹底的に体に叩き込みましょう。「この音の運指はこう」と頭で理解するよりも先に、五線紙にある音符を見た瞬間に「指の形」がわからなければいけません。
理想は「替え指」と呼ばれるサブの運指も、と言いたいところですが、ここはまず基本を押さえましょう。
一瞬でできるように、一瞬よりも速く反応できるまで練習しましょう。掛け算の九九と同じです。
速いテンポの楽譜に目が追いつけない場合
簡単な譜面であれば、トランペット中級者以上であれば、練習したことがない曲でもそれなりに吹けます。
しかし、初見ではなかなか難しい譜面があるのも事実。例えば
- ♯や♭が鬼のように多い
- テンポが複雑
- 速いor音符が多い
などが挙げられます。そこそこ速くて細かいくらいの譜面ならば少し練習すれば吹くことはできますが、そうもいかない難しい譜面もあります。
そんな時は「ゆっくりから」。これが鉄則です。
どんなに難しい譜面でも、いきなり速いテンポで吹かず、まずはゆっくりから練習します。徐々にテンポを上げていって、最終的に完成形まで持っていきます。
「初見」かどうかに関わらず、速くて難しい譜面はゆっくりから。これを覚えておいてください。
曲に指が追いつかない場合
実際のところ、私が演奏したことのある曲で、最終的に「指が追いつかない」となった曲はありません。
きっととんでもない難曲は存在しますが、この記事での練習法を実行すれば、学校や団体で演奏する大体の曲はこなせるようになります。
指が追いつかない場合、その原因の多くは「運指の遅さ」ではありません。
「人間の構造的に難しい運指である」「練習不足」「発音と運指がかみ合わない」のいずれかだと考えます。
次からの章で詳しく説明します。
トランペット、どう持ってる?
トランペットに「力」はほぼ不要。「力み」は禁物。
春から部活で吹奏楽を始めて、まずは先輩から楽器の持ち方を習うと思います。
私が考える「初心者に伝えたい持ち方」は
「力まない持ち方」に尽きます。
上の写真を見てください。私は、左手でトランペットを握りません。左手の人差し指の第2関節に「乗せて」いるだけです。
次に、右手の写真を見ていただきます。
画像の通り、右手の親指は第1、第2ピストンの間に刺しています。そして、この画像ではわかりづらいですが
「小指は指かけにかけていません。」
この右手の持ち方が私が運指の苦手を克服した秘策です。
「全員こうしろ」とはもちろん言いません。
私の場合は、トランペットを吹く際、初心者の頃からの癖でどうしても「力み」が入ってしまい、楽器を口に押し付ける悪い癖がありました。それを矯正するため、楽器に力が入りづらい持ち方を考え、この持ち方に至っています。
この画像のようにしっかりと持つ奏者もいます。安定性はいいのですが、この持ち方だとどうしても力みが入ってしまいます。また、運指も遅くなります。
この力まない持ち方でもチューニングの上の「ド」、いわゆる「ハイB♭」は軽く出ますのでご安心ください。
部活で初めてトランペットを触るとき、先輩から持ち方を教わると思います。この記事の持ち方は「推奨」であり、「絶対」ではありません。先輩のいうことを聞き、基本を教わってから自分で考えて上達しましょう!
トランペットで指を速く動かす持ち方は?
大事なことなので最初に言います。
「トランペットのピストンは真上から押せ。」です。画像を見ましょう。
楽器をしっかり握るとどうしても、「指の腹」でピストンを押しがちです。この持ち方だと、腹で押すほうが「速い」からです。
この押し方をすると、ピストンに「斜め方向の力」が働きます。
指の腹で押す奏者もいますが、ピストンは斜めから押すように設計されていません。斜めから押すことによって中のシリンダーが削れる、とまでは言いませんが、楽器の寿命を縮めるのは間違いないと思いますので、ピストンは真上から押しましょう。
参考に同じようなアングルで私の持ち方を載せます。
上記の写真の持ち方の場合、3本の指を「下に押す」というより、「引っかく」ような動作になり、指の回転効率が高まります。
せっかくある「指かけ」を使わない理由
人間の指の筋肉はある程度「つながって」います。
何も持たず、右手の小指と薬指を交互に動かしてみてください。
できましたか?私はこの動きができません。
次に、中指と薬指を交互に動かしてみてください。
「関係ないはずの小指が、動きませんか?」
小指と薬指は、「つながっている」んです。
薬指を速く動かしたい場合、小指も動く必要があります。なので私は
「小指を指かけで固定しません。」
トランペットの運指において、中指と薬指を独立させた動きが一番やっかいです。
小指を固定してしまうと、どうしても第2、第3ピストンの運指に問題が出てきます。
なんなくできる人もいるかもしれませんが、私の場合、小指を指かけから外すことで克服しました。
トランペットは「右手の小指」じゃなく「左手で」支えるのが速い運指の第一歩!!
トランペットで指を速く動かす具体的な方法
私は本当に手先が不器用なのですが、それでも人から「指が回る」と言われるまでに至ったのにはいろいろと理由があります。
トランペット運指のための矯正練習
まずは、自分の体を改造しました。
改造といっても、実際に外科的なことをしたわけではなく、神経的に慣れさせた、といったほうがいいかもしれません。
机でパタパタ、トランペット練習
- 机に右手を置きます
- 中指を左手で押さえる
- 人差し指と薬指をひたすらパタパタ
- 慣れてきたら左手を離して右手だけでパタパタ
- さらに慣れたら中指つけたまま薬指だけ高速パタパタ
これはいつでもできます。ぜひ実践してください。かなり指使いに違いが出ます。
楽器でパタパタ、薬指練習
- 楽器をかまえます
- 第2ピストンを押し、左手中指で右手中指を固定します
- ひたすら第1と第3ピストンをパタパタ
- 慣れてきたら、左手を離してパタパタ
- さらに慣れたら、第2押したまま第3だけ高速パタパタ
合奏中の暇なときはひたすらやっていました。
この2つの反復練習で、第2ピストンと第3ピストンの動きは劇的に変わります。
中指(第2)を押さえている、というのがミソです。この動きだけで、トランペットにおいて難しいとされる動きはだいたい解決します。
中指(第2)を押さえない第1、第3のパタパタは簡単なんです。人間の構造的に。そこであえて第2を固定することで、中指と薬指に
「君たちは別の生き物なんだよ」と認識させます。そしてさらに、動かしづらい薬指単独のトレーニングも行うことで、指の神経が非常に鍛えられます。
トランペット練習曲を用いた運指トレーニング
今回は実際の楽譜を用意することができませんでしたが、運指のトレーニングとして
「スケール(音階)練習を転調してひたすら吹く」ということを実践します。
チューニングの「ド(B♭)」の1オクターブ下の「ド」から始まるdur(長調)で、決まったパターンのスケール練習。
それを「レ(C)」スタートに変えて練習。次は「ミ(D)」に変えて・・・とひたすら続けます。
特に一般的なトランペット「B♭管」においては、「D(ミ)dur」、「G(ラ)dur」、「C(レ)dur」がおすすめです。
吹いてみればわかりますが、特に「D(ミ)」からスタートする長調においては
「全ての音が第2ピストンが押された運指」になります。これのやっかいなこと…。
ですが、このスケール練習を続け、慣れてきたらどんどんスピードを上げることによって、難しい運指に対する耐性ができてきます。
私が実際に練習していたスケールは、別記事で紹介したいと思います。
それでも速くてキビしい!裏技ないの!?
どうしても速い曲で指が回らないことってあります。
そんな時に試していただきたいのが、本記事冒頭で少し触れた
「替え指」です。
替え指は、普段使わない分、どうしても音程が不安定になりがちです。しかしながら、速すぎるパッセージでは、替え指を使うことにより物理的な面で運指を克服できることがあります。
AJIちゃんのように、「どうしても」という場合に使うことをおすすめします。普段から、「楽だから」と替え指に頼っていると、音程も不安定、運指も上達しないといったことが考えられますので、練習してもどうしても厳しい場合に替え指を考慮するのがいいと思います。
トランペットの運指に関するまとめ
今回は、トランペットの指使い「運指」についてまとめてみました。参考になったでしょうか。
できないのは「練習不足」だからだけではなく、「楽器の持ち方」「構え方」「手の慣らし方」にも原因があると私は思います。ぜひ、この記事を参考に色々なアプローチをしてみて、速い曲も吹きこなせるようになりましょう。
それでは本記事のまとめです。
速い指使いには「コツ」が必要
「練習法」と「努力」も不可欠
楽器の持ち方ひとつで動かしやすさは変わる
楽器は力まず持って、力まず吹こう
ピストンはまっすぐに押そう
小指は指かけから外すと自由になる!!
地味なパタパタ練習で、神経を発達させよう
スケール練習を転調させて、慣れない音階にも挑戦しよう
いざというときは、「替え指」も奥の手として使おう